このたびは歴史と伝統ある九州外科学会の会長を仰せつかり、平成29年5月26日（金）、27日（土）の2日間、熊本市のホテルメルパルク熊本にて、第54回九州外科学会を開催させていただくこととなりました。熊本での開催は、昭和43年に第2外科の吉永直胤教授、昭和49年に第1外科の横山育三教授、昭和56年に第2外科の赤木正信教授、平成6年に第1外科の宮内好正教授、第2外科の小川道雄教授、平成17年に心臓血管外科の川筋道雄教授が開催されておりますので、12年ぶり6回目となります。大変光栄なことと存じ、開催に向け教室員をあげて鋭意準備を進めております。

　ご存じのとおり、平成28年4月14日と16日に発生した震度7の熊本地震では、50名の尊い命が失われ、家屋の倒壊やライフラインの喪失により、最大で18万人の方が避難所での生活を余儀なくされました。とくに熊本県民の心の拠り所である熊本城、水前寺公園、重文阿蘇神社といった歴史的建造物の倒壊は、これまで先人達が積み上げてきた輝かしい歴史と伝統に対する喪失感だけでなく、未来に対する暗澹たる思いを私達に抱かせました。教室では幸いに人的被害はありませんでしたが、研究施設の被害が著しく、一時的に臨床、教育、研究が停滞することになりました。しかし、九州の外科系の教室、病院を始めとして、全国の皆様方からの心温まる励ましのお言葉、物的、人的ご支援により、日々復興に向けて歩みを進めていくことができました。この場を借りて皆様のご厚情に心より感謝申し上げます。

　本学会は、九州地区における重要な外科専門学会であり、とくに若手外科医にとっては貴重な学会発表の登竜門となる会です。今回も多数の研究発表及び講演を予定しているほか、医学生・研修医セッションを企画したいと考えております。本会の開催が外科学の発展に貢献し、新たな外科医療ならびに教育に関する情報発信に寄与できましたら、私達にとりまして望外の喜びでございます。

　現在、熊本は復興の途上にあります。熊本城には立ち入ることができませんが、垣間見える石垣は、在りし日の雄大さを伝えるだけではなく、創造的復興を目指す私達に力を与えてくれています。風雪に耐え、また花開く日を目指し歩みを続ける、今しか感じる事ができない熊本を、皆様に見ていただけますと幸甚に存じます。幸いに熊本の街の賑わいは、以前に勝る活気を取り戻しています。馬刺し、熊本ラーメン、天草の海の幸、阿蘇の山のめぐみが皆様をお待ちしていますので、心ゆくまで新緑の熊本をお楽しみいただきますことを心より願っております。